薄めの墨で、殿は三本置きに長い線を一本入れて男性の迫力・力強さを出しながら等間隔に丁寧に書きます。姫は女性らしい優しさを表現するために長い線は入れません。殿と姫でそれぞれ毛書きの表現を変えているひな人形は石川潤平工房だけです。
眉毛の形、均等な毛書き技法はまるで羽毛のようで気品を感じます。
人の眉毛と同じように細かい線を盾に重ねて眉毛の形にしています。極限のこの技法は石川潤平工房の職人だから成し得る技です。
平安時代以降行われた正式な冠の付け方です。あごで結ぶ余分な取り付け紐がありませんので、お顔がすっきりときれいに映ります。写真左が式正の冠です。
高貴な人はめったに肌を見せないために、殿の左手は自然に袖を握るようなしぐさになります。
石川潤平工房では、デッサンに基づいた理想の形にするために、作品一つ一つに合わせた大きさや形の手を製作しております。ふっくらした指先の形や爪の形、爪の色や握ったときにできるしわも限りなく人の手に近づけ表現しています。
一般品は既製の共通部分の手を使うので、殿の左手は姫の左手と兼用するため指を伸ばしたままになっています。
おひな様の髪型は、「古典下げ髪」(写真左)と「おすべらかし」(写真右)の2種類があります。平安時代に誕生した日本古来の髪型である「古典下げ髪」は、絹糸を黒く染めた伝統素材で結髪した気品溢れる髪型です。また、「おすべらかし」は、皇室の行事でもおなじみの髪型で、昭和時代に入り、広まりました。
人間と同じバランスで肩幅を縮めて制作されています。均整の取れた造形美が、人形の美しさを一層協調し、優雅な雰囲気を醸し出しています。写真右が高倉胴のお内裏さまです。
「たてわく」、「亀甲」、「菱」、「格子」など、日本古来の伝統的な織物文様を、忠実に再現した衣装に仕立てています。耐久性にもすぐれ、まさに一生物の重厚さです。写真左は「たてわく」右が「うんかく」になります。
木目込人形は、作家の究極の個性や創造性が溢れる作品です。極限と形容しても決していいすぎでない作家の技により、存在感溢れる全体造型や見飽きることのないお顔の表情、慈愛に満ちた眼差しなど、名人作家の「技」と「美」をご堪能いただけます。
木目込に見られる笹目は石川潤平による独自の技法で笹のような細い筆遣いを重ね描くことで、奥行きのある眼差しを創り上げます。上から見た表情、下から見上げた表情、見る位置によってさまざまな表情がうかがえます。(能面技法)